共通科目情報処理(講義)、体育専門学群対象、2000年06月01日 電子・情報工学系 新城 靖 <yas@is.tsukuba.ac.jp>
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インターネット
(
an internet
)
とは、もともとネットワークのネットワーク、つまり、いくつかのネットワー
クが
ルータ(router)というコンピュータを使って
相互接続されたもである。
最小のinternet(小文字)
インターネットではないネットワーク
世界最大のインターネットは、インターネットと呼ばれる。これは、英 語で書くと、固有名詞のということで頭を大文字にして the Internet と綴られる。今日の話題は、この固有名詞としてのインターネットである。
固有名詞としてのインターネットは、次のような意味を含む。
現在のインターネットは、 ARPANET という、1960年代の終りにアメリカ国防省の資金による研究プロジェクトの結 果作られたネットワークが元になっている。ARPANET の研究成果の1つとし て、TCP/IP という 通信プロトコルがある。 プロトコル(protocol)、 あるいは、 通信プロトコル(communication protocol) とは、通信を行う機器、コンピュータ、あるいは、プログラムの間でどのよう な手順で行うかを定めた規則である。
インターネットという言葉は、TCP/IP では 到達できなくても、 UUCP などの何らかの方法で 電子メールを交換できる範囲を意味することも ある。(電子メールが、インターネットの応用で最も重要。)
電話のネットワークと比較することで、インターネットの説明をする。通信量 で見た場合、1994年まで世界最大のネットワークは、電話であった。 1995年では、インターネット上を流れるデータの通信量が、電話による音 声の通信量を超えた。
ネットワークとして見た時の電話の特徴
インターネットの特徴
2000年ごろの日本のインターネットの様子。 インターネットの世界は、日進月歩で変化している。 このWWWページの内容は、すぐ古くなる。
日本でインターネットを利用する方法:
図? インターネット接続サービス・プロバタイダまでの接続方法
モデムは、電話回線などでビット列を送るための機器。 ビット列は、音の波の形に変換されて電話回線に送られる。
インターネット接続サービス・プロバイダ間も、仕組みとしては、ルータで接
続されている。
図? インターネット接続サービス・プロバタイダ間の接続
世界のインターネットの中心は、アメリカである。世界各国は、基本的には、 アメリカのインターネットのどこかに接続する。 アメリカ以外の2国間の通信も、アメリカ経由になることが多い。
インターネットで現在よく利用されているサービス(アプリケーション、 応用)には、次のようなものがある。
電子メール ( e-mail, electronic mail ) は、電話や(普通の)手紙と同じように、個人と個人の間で情報を交換するた めの仕組み。交換されるデータは、基本的は、文字データである。
電子メールの類語
電子メールの利点
ある特別なアドレスに電子メールを送ると、リストに登録されている全員にメー ルが配られる。
電子メールが主に1対1の通信であるのに対して、 ネットワーク・ニュース ( network news、 ネットニュース(netnews) ) ネットワーク・ニュースは、1対多の通信を提供する。 ある書き手のメッセージ(記事)を、大勢の人が読む。 交換されるデータは、基本的は、文字データである。
新聞やテレビと比較しての特徴
ファイル とは、コンピュータでデータを保存するための仕組みである。 ファイル転送 とは、 別のコンピュータにファイルをコピーすることである。 ファイルに保存できるデータならば、どんなデータでもコピーすることができる。
ftp(file transfer program/protocol)というのは、 ファイルをコピーするための プロトコル、あるいは、そのプロトコルを利用して コピーをするプログラムを意味する。
ファイル転送機能の面白い使い方の一つに、 匿名ファイル転送(annonymous ftp) がある。普通のファイル転送では、接続先のコンピュータに 利用者登録されている必要があり、接続時には、普通、利用者名と パスワードが聞かれる。 匿名ファイル転送では、利用者登録の必要がなく、誰でも自由にファイルをコ ピーすることがでる。ソフトウェア、各種のドキュメント、論文、テクニカル・ レポートの配布に使われている。
遠隔ログインとは、遠く離れたコンピュータを直接接続されているコンピュー タと同じように利用するための仕組みである。この機能を利用すると、遠くの コンピュータの計算パワーを利用したり、そのコンピュータで動いているデー タベースを利用することができるようになる。主に、文字による対話的な利用 で使われる。
2000年現在、筑波大学教育用コンピュータで実習室のパソコンから電子メー ルを讀む時には、遠隔ログインを行う必要がある。
WWW(The World-Wide Web) は、文字に加えて、絵や音も扱えるような掲示板である。
WWWの特徴
WWW で、データを手元のコンピュータの画面に表示させるためのプログラムを WWW の ブラウザ(browser) とう。browse とは、ぶらぶらと拾い読みをするというい意味である。 現在、よく使われているブラウザには、 Netscape、MS-Internet Explore、lynx などがある。
WWWページの数は、非常に膨大で、その中から必要な情報を見つけだすことは、 難しい。WWWでアクセス可能な検索プログラムを利用す る方法がある。以下で説明する FAQ を利 用する方法もある。
WWW は、個人の放送局、新聞社という意味がある。 放送局や新聞社は、権力と関連している。 クーデターが起きると、放送局や新聞社が押さえられる。 WWW で、権力の移動が起きている。
talk
と
phone
は、ネットワーク上で文字による会話をするためのプログラ。一方の画
面で打ち込んだ文字が、即座に相手の画面に現れる。
IRC (Internet Relay Chat)
は、文字による遠隔会議のプログラムある。ある参加者が打ち込んだメッセー
ジは、即座に他の行単位で参加している人全員に送られる(ネットワーク・ニュー
スでは、1つの文書単位で、遅延がある)。
IRCの参加者は、何種類かのプログラムを使って近くのサーバ・プログラムに 接続して、メッセージを送受信する。サーバ・プログラムは、 他のサーバ・プログラムとの間でメッセージの交換する。結果として世界中 の、地理的に離れている参加者の間でメッセージの交換することができる。
IRC のサーバには、世界規模のものもあれば、日本国内のもの、組織内のもの がある。1つの IRC のサーバでも、複数の会議室があり、この会議室のこと を IRC では、 チャネル(channel) (チャンネル、チャンネル) と呼んでいる。
電子メールでもWWWでも、TCP/IPという仕組みを用いて通信を行っている。 この節では、TCP/IP の仕組みについて簡単に説明する。 大事な考え方には、次のようなものがある。
電子メールでもWWWでも、TCP/IPを用いた通信では、 図のように、4つの プロトコルの 層(layer)( 通信の手順を決めた規則) が使われる。TCP/IP自身は、 TCP層 と ipそう という2つのプロトコルから成り立っている。 ネットワーク通信では、 さまざまなプロトコルが決められ、全体として層をなしている。この様子を、 プロトコル・スタック(protocol stack) と呼ぶ。
約束の上に約束を積み重ねる例。
IP (Internet Protocol) は、(信頼性がない)データグラム転送サービスを提供する通信プロトコルである。 データグラム(datagram) は、次のような性質を持つ。
データグラムは、書留めではない郵便に似ている。IPのデータグラムが配達 されるときに使われる番号が、 IPアドレス です。IPアドレスとしては、現在32ビットの整数が使われている。IPアドレス を表現する時には、普通、8ビットずつ区切って、0から255までの10進 数を4つで表現される。たとえば、次のように書く。
これは、10進数でいくつになるかを計算したい時には、次のようにして計算 する。12.34.56.78
ルータは、IPアドレスを見て、データグラムの送り先を判断する。郵便局で、 住所を見て、送り先を判断するのと似ている。郵便局は、一番末端のものでは なくて、中間的な集配をする郵便局がある。同様に、ルータも、自分自信は、 最終到達地点のコンピュータを知らなくても、別のルータに送るだけのような ものもある。(((12 * 256)+34)*256+56)*256+78
TCP(Transmission Control Protocol,tcpip) は、IP の機能を利用して、信頼性のある(reliable)双方向の ストリーム転送サービス(stream transport service) を提供する通信プロトコルである。 (図)。 ストリーム には、次のような性質がある。
TCPで通信をする時に、通信相手を識別するにはIPアドレスと ポート番号(port number) が使われる。ポート番号は、16ビットの整数で、よく使われる アプリケーション ( サービス ) には、あらかじめどの番号を使うかが決めらている。これを well-knownポート番号(well-known port number) という。
TCP層の上には、 応用層 が定義されている。この層では、電子メールの転送、ファイル転送、遠隔ログ イン、WWW、といった TCP/IP を利用するプログラムの間の通信方法が定義さ れている。
TCP/IPを使った通信は、まるでコンピュータ同士(プログラム同士)が電話で 会話するように進められる。
IPのデータグラムを転送するためには、さまざまな物理的な媒体 (電線、光ケーブル、電波) が使わる。LANでは、次のような媒体が使われる。データグラムは、ネットワーク通信では、最も基本的な転送サービスである。 イーサネットやFDDIが提供する転送サービスも、データグラムである。
UDP (User Datagram Protocol) は、TCPと同様にIP上に構築されたプロトコルで、IPと同様にデータグラム 転 送サービスを提供する。UDP でも、通信相手を識別するにはIPアドレスと ポート番号 が必要である。よく使われる応用には、 well-knownポート番号が定義さ れている。
コンピュータが1台しかない場合、プログラムは1つでよい。通信をする場合 には、プログラム(コンピュータ)が2つになる。そのうちの1つのプログラ ム(またはコンピュータ)を、「クライアント」、もう1つを「サーバ」とい う。
元々の意味
サービスを提供する方は、1つのプログラム(コンピュータ)で複数の利用者 の面倒をみる。その結果、1台のサーバに複数のクライアントがつながる。
TCP/IP では、通信するプログラムとプログラムの間は、電話で会話をするよ うに通信が行われる。両方同時に話をすることは、(可能ではあるが)あまり 行われない。次のようなことを、繰り返すことになる。
図? クライアント・サーバ・モデルに基づく通信パタン
TCP/IP の通信では、通信を始める前に、まず、通信路を作る作る必要がある。 これは、電話で話をする前に、まず、電話をかける操作を行うことと似ている。以上のように、クライアントとサーバは、いろいろな意味で使われる。これら の意味は、多くの場合、一致しているが、一致していないこともある。
TCP/IPで通信する時には、通信相手のIPアドレス(32ビットの整数、番号)が 必要になる。IPアドレスは、コンピュータにとって扱いやすいが、人間にとっ て分かりにくい。
人間にとってわかりやすい記号(文字列)を使ったコンピュータの名前から IPアドレスに変換するサービスがあれば便利である。このサービスを、 名前サービス(name service)、 という。 名前サービスを提供するプログラム(プロセス)を、名前サーバという。
名前から名前を指している番号に変換することを 名前解決(name resolution) という。
インターネットで使われている名前サービスは、 DNS(Domain Name System) と呼ばれる。 DNS では、膨大な数のホスト名を含む名前空間を階層的にドメイン(領域)に 分割して管理ている。 この空間の構造は、 ファイル名で使われている木構造とまったく同じものである。
通信プロトコルと同様に、 きちんとデータが送れるように、データの表現形 式が決められている。たとえば、電子メールやネットワーク・ニュースでは、 日本語の表現方法として JIS 漢字コードを使うということが決められてる。
文字コードの解釈が間違っていた時には、ある文字を別の文字として画面に表 示してしまうことになります。この状態を、 文字化け という。文字化けは、通信の途中でデータの一部が壊れてしまった時にもおこる。
文字の他に画像や音声の扱いも、インターネットでよく使われるものがいくつ か決まっている。たとえば、WWWでは、インライン・イメージとしては、 GIF や JPEG がよく使われる。
RFC には、標準や規則の他に、 FYI (For Your Information) が含まれている。RFC として発行されると、世界中の様々な場所にきちんと 管理されて保存される。FYI は、この性質を使っ て、大勢の人が必要とするような文章を提供するものである。
インターネットは、さまざまなネットワークが相互接続されている。普通、 それぞれのネットワークには、資金提供者や管理者がいて、それぞれ独自の AUP を定めている。 AUP(Acceptable Use Policy) とは、「受け入れ可能なネットワークの利用目的」を意味する。 日本語では、否定を使って 「利用制限」と言った方がわかりやすい。
AUP Free とは、利用制限がなく、どんな目的に利用してもいいという意味になる(ただ し、法律の目から逃れられるものではない)。
SINET など、利用が非営利目的に制 限されているネットワークがある。
ネットワークの AUP の他に、ネットワーク・ニュースのニュース・グループ やメーリング・リストにも AUP がある。たとえば、fj.* には、 非営利目的 の記事のみ投稿可能という AUP がある。「非営利」とは、企業からの広告を 禁止しているという意味で、製品の話題をしてはいけないということではない。 たとえば、あるコンピュータのユーザが質問を投稿して、そのメーカ の人が答えることは、問題ないとされている。
特に、注意すべき法律は、 著作権法 である。法律については、別の日の講義で述べる。
法律や RFC にするにはな じまないが、守りたい礼儀・作法・行儀を、 ネチケット(netiquette) とう。これは、ネットワークとエチケットから作られた言葉である。
ネチケットといっても、それほど特別なことはなく、基本は、「現実社 会の常識は、インターネットでもそのまま通じる」と考えるとよい。
「ネットの前ではみな平等」という考え方もありますが、常に有効というわけ ではなくて、時と場合による。
インターネット上の重要な情報源に FAQ がある。 FAQ は、もともとは、 Frequently Asked Questions の略で、「よくある質問」という意味である。実際には質問だけでなく て答えもいっしょに書かれている。実用的で非常に品質がよい情報 が集まっていることが多いので、質問したいことがなくても、自分の興味がある 分野の FAQ を探して読むことはよい勉強になる。
FAQ を作る活動は、ネットワーク・ニュースでよく行なわる。 繰り返しなされる質問をまとめて定期的に投稿することで、記事の質を 高めることができる。ソフトウェアの説明書としても、 単に機能を説明したマニュアルとは別に FAQ 形式の説明書が作られることがある。
FAQ を探して読むことは大事だが、FAQ にある質問をしてはいけないというこ とない。
インターネットには、「このネットワークを活用し発展させる人々のコミュニ ティ」という意味がある。コミュニティーには、当然文化がある。インターネッ トでも独自の文化があります。
お金を払っている客の場合は、take ばかりしていてよい。しかし、インター ネットの参加者としては、take ばかりではなく、自分の得意とする分野につ いて give をすることが大事になる。 電子メールやネットワーク・ニュースの記事の差出人や署名に組織の名前が入っ ていたとしても、メッセージの内容の責任は個人に還元される。 (異論もある)政府による規制、不正アクセスの問題がある。