インターネット(1)

共通科目情報処理(講義)、体育専門学群対象、2001年05月31日

                                       電子・情報工学系
                                       新城 靖
                                       <yas@is.tsukuba.ac.jp>

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■復習

■今日の重要な話

■インターネットとは

インターネット ( an internet ) とは、もともとネットワークのネットワーク、つまり、いくつかのネットワー クが ルータ(router)というコンピュータを使って 相互接続されたもである。

最小のinternet(小文字)

最小のinternet(小文字)

ネットワーク とは、それぞれ独立した方針で運営されているコンピュータ・ネットワーク である。

インターネットではないネットワーク

世界最大のインターネットは、インターネットと呼ばれる。これは、英 語で書くと、固有名詞のということで頭を大文字にして the Internet と綴られる。今日の話題は、この固有名詞としてのインターネットである。

固有名詞としてのインターネットは、次のような意味を含む。

  1. 以下で説明する TCP/IP という共通の通信プロトコルにもとづくネットワークのネットワーク
  2. このネットワークを活用し発展させる人々のコミュニティー
  3. このネットワークを通じて到達できる資源の集積
(2), (3) の意味合いも大事。

現在のインターネットは、 ARPANET という、1960年代の終りにアメリカ国防省の資金による研究プロジェクトの結 果作られたネットワークが元になっている。ARPANET の研究成果の1つとし て、TCP/IP という 通信プロトコルがある。 プロトコル(protocol)、 あるいは、 通信プロトコル(communication protocol) とは、通信を行う機器、コンピュータ、あるいは、プログラムの間でどのよう な手順で行うかを定めた規則である。

インターネットという言葉は、TCP/IP では 到達できなくても、 UUCP などの何らかの方法で 電子メールを交換できる範囲を意味することも ある。(電子メールが、インターネットの応用で最も重要。)

◆インターネットと電話

電話のネットワークと比較することで、インターネットの説明をする。通信量 で見た場合、1994年まで世界最大のネットワークは、電話であった。 1995年では、インターネット上を流れるデータの通信量が、電話による音 声の通信量を超えた。

ネットワークとして見た時の電話の特徴

  1. つながっている機器は、電話機(音声と電気信号を変換する機械)である。
  2. ネットワークを流れるデータは、音声のみである。
  3. 電話には、電話番号が振られている。
  4. どの電話もどの電話とも接続可能である(例外あり)。
  5. 電話を掛ける時、電話を使う人は、電話番号を指定するだけでよい。 電話を使う人は、途中の通信を中継している交換機の存在を気にしなくてもよい。

インターネットの特徴

  1. つながっている機器は、コンピュータである。
  2. ネットワークを流れるデータは、コンピュータで扱えるデータ(ビットの並び、2進数)である。
  3. コンピュータにはIPアドレスと呼ばれる番号がふられている。
  4. どのコンピュータもどのコンピュータとも接続可能である(例外あり)。
  5. 通信をするとき、使う人は、IPアドレスを指定するだけでよい。 使う人は、途中の通信を中継しているコンピュータ(ルータ)の存在を気にしなくてもよい。

電話にはない、インターネットの特徴は、末端のコンピュータの力を借りて、 さまざまなサービスが提供できることにある。

◆在りし日のインターネットの姿

2001年ごろの日本のインターネットの様子。 インターネットの世界は、日進月歩で変化している。 このWWWページの内容は、すぐ古くなる。

日本でインターネットを利用する方法:

インターネット接続サービス・プロバイダ(Internet Service Provider, Network Service Provider) を利用する。
NTTと同じような通信会社だが、自前で通信媒体を持っている所は少なく、 NTTなどから専用線を借りている場合がほとんど。
パソコン通信会社を利用する。
パソコン通信のサービス(電子メールや掲示板)を提供していた会社が、 インターネット接続サービスまで提供するようになったもの。大量の独自の情 報を会員だけに提供する所が、普通のインターネット接続サービス・プロバ イダとは違う。ただし、インターネット接続サービスという面では、あまり違 いはい。
学術ネットワークを利用する。
SINET,JOIN,IMnet など、学術研究目的に用途が限定されているネットワークを利用する。
WIDEプロジェクトに参加する。
WIDE は、 インターネット技術の研究プロジェクト。大学や企業などが参加している。そ のネットワークでは、日常的な利用の他に、新しい機能の実験を行うことがある。
地域ネットワークを利用する。
商用のインターネット接続サービス・プロバイダが現われてる前に、地 域ごとにまとまって、専用線を共有するという考え方で生まれてきたネットワ ーク。地域振興の意味合いもある。 インターネット接続サービス・プロバイダまでの接続

図? インターネット接続サービス・プロバタイダまでの接続方法

図? インターネット接続サービス・プロバタイダまでの接続方法

モデムは、電話回線などでビット列を送るための機器。 ビット列は、音の波の形に変換されて電話回線に送られる。

インターネット接続サービス・プロバイダ間も、仕組みとしては、ルータで接 続されている。

図? インターネット接続サービス・プロバタイダま間の接続

図? インターネット接続サービス・プロバタイダ間の接続

インターネット接続サービス・プロバイダが直接相互接続している場合もあるが、 ある場所に置かれた特別なルータで相互接続されている場合もある。 この相互接続の場所を NSPIXP (Network Service Provider Inter eXchange Pint)CIX (Commercial Internet eXchange) とう。

世界のインターネットの中心は、アメリカである。世界各国は、基本的には、 アメリカのインターネットのどこかに接続する。 アメリカ以外の2国間の通信も、アメリカ経由になることが多い。

国内のインターネット接続サービス・プロバイダのいくつかは、独自の国際専 用回線をアメリカに向けて引いている。アジアやヨーロッパにも専用線を張る 動きも出てきている。

■インターネットで使えるサービス

インターネットで現在よく利用されているサービス(アプリケーション、 応用)には、次のようなものがある。

  1. 電子メール
  2. ネットワーク・ニュース
  3. ファイル転送
  4. WWW (The World Wide Web)
  5. 遠隔ログイン

◆電子メール

電子メール ( e-mail, electronic mail ) は、電話や(普通の)手紙と同じように、個人と個人の間で情報を交換するた めの仕組み。交換されるデータは、基本的は、文字データである。

電子メールの類語

電子メールの利点

◆メーリング・リスト

電子メールの重要な応用の1つ。

ある特別なアドレスに電子メールを送ると、リストに登録されている全員にメー ルが配られる。

◆ネットワーク・ニュース

電子メールが主に1対1の通信であるのに対して、 ネットワーク・ニュース ( network news、 ネットニュース(netnews) ) ネットワーク・ニュースは、1対多の通信を提供する。 ある書き手のメッセージ(記事)を、大勢の人が読む。 交換されるデータは、基本的は、文字データである。

新聞やテレビと比較しての特徴

筑波大学教育用コンピュータで、 ネットワーク・ニュースを読み書きするには、サーバへ 遠隔ログインして mnews というプログラムを使うことを勧める。Windows 2000 上

◆ファイル転送、匿名ファイル転送

ファイル とは、コンピュータでデータを保存するための仕組みである。 ファイル転送 とは、 別のコンピュータにファイルをコピーすることである。 ファイルに保存できるデータならば、どんなデータでもコピーすることができる。

ftp(file transfer program/protocol)というのは、 ファイルをコピーするための プロトコル、あるいは、そのプロトコルを利用して コピーをするプログラムを意味する。

ファイル転送機能の面白い使い方の一つに、 匿名ファイル転送(annonymous ftp) がある。普通のファイル転送では、接続先のコンピュータに 利用者登録されている必要があり、接続時には、普通、利用者名と パスワードが聞かれる。 匿名ファイル転送では、利用者登録の必要がなく、誰でも自由にファイルをコ ピーすることがでる。ソフトウェア、各種のドキュメント、論文、テクニカル・ レポートの配布に使われている。

◆遠隔ログイン

遠隔ログインとは、遠く離れたコンピュータを直接接続されているコンピュー タと同じように利用するための仕組みである。この機能を利用すると、遠くの コンピュータの計算パワーを利用したり、そのコンピュータで動いているデー タベースを利用することができるようになる。主に、文字による対話的な利用 で使われる。

筑波大学教育用コンピュータでは、icho というサーバを遠隔ログインで利用 することもできる。遠隔ログインすると、Unix というオペレーティング・シ ステムで動作するさまざまなプログラムを利用することができる。

図? 遠隔ログインによるプログラムの実行の様子

図? 遠隔ログインによるプログラムの実行の様子

◆WWW

WWW(The World-Wide Web) は、文字に加えて、絵や音も扱えるような掲示板である。

WWWの特徴

WWW で、データを手元のコンピュータの画面に表示させるためのプログラムを WWW の ブラウザ(browser) とう。browse とは、ぶらぶらと拾い読みをするというい意味である。 現在、よく使われているブラウザには、 Netscape、MS-Internet Explore、lynx などがある。

WWWページの数は、非常に膨大で、その中から必要な情報を見つけだすことは、 難しい。WWWでアクセス可能な検索プログラムを利用す る方法がある。以下で説明する FAQ を利 用する方法もある。

WWW は、個人の放送局、新聞社という意味がある。 放送局や新聞社は、権力と関連している。 クーデターが起きると、放送局や新聞社が押さえられる。 WWW で、権力の移動が起きている。

◆IRC(Internet Relay Chat)

IRC (Internet Relay Chat) は、文字による遠隔会議のプログラムある。ある参加者が打ち込んだメッセー ジは、即座に他の行単位で参加している人全員に送られる(ネットワーク・ニュー スでは、1つの文書単位で、遅延がある)。

IRCの参加者は、何種類かのプログラムを使って近くのサーバ・プログラムに 接続して、メッセージを送受信する。サーバ・プログラムは、 他のサーバ・プログラムとの間でメッセージの交換する。結果として世界中 の、地理的に離れている参加者の間でメッセージの交換することができる。

IRC のサーバには、世界規模のものもあれば、日本国内のもの、組織内のもの がある。1つの IRC のサーバでも、複数の会議室があり、この会議室のこと を IRC では、 チャネル(channel) (チャンネル、チャンネル) と呼んでいる。

http://www.osss.is.tsukuba.ac.jp/~kirane/misc/chat.html 筑波大学内で動作している IRC サーバの紹介。

■TCP/IPによるインターネットの仕組

電子メールでもWWWでも、TCP/IPという仕組みを用いて通信を行っている。 この節では、TCP/IP の仕組みについて簡単に説明する。 大事な考え方には、次のようなものがある。

◆TCP/IP

プロトコル・スタック

電子メールでもWWWでも、TCP/IPを用いた通信では、 のように、4つの プロトコルの 層(layer)( 通信の手順を決めた規則) が使われる。TCP/IP自身は、 TCP層ipそう という2つのプロトコルから成り立っている。 ネットワーク通信では、 さまざまなプロトコルが決められ、全体として層をなしている。この様子を、 プロトコル・スタック(protocol stack) と呼ぶ。

TCP/IPの4層モデル

TCP/IPにおけるプロトコル・スタック

約束の上に約束を積み重ねる例。

IP

IP (Internet Protocol) は、(信頼性がない)データグラム転送サービスを提供する通信プロトコルである。 データグラム(datagram) は、データと電報(telegram)から作られた造語で、 次のような性質を持つ。 データグラムは、 パケット と呼ばれることもある。

データグラムは、葉書に似ている。IPのデータグラムが配達 されるときに使われる番号が、 IPアドレス である。IPアドレスとしては、現在32ビットの整数が使われている。 (IPv6 では、IP アドレスは、128ビットになる。)

ルータによるデータグラムの転送

ルータによるデータグラムの転送

ルータは、IPアドレスを見て、データグラムの送り先を判断する。

郵便局で、住所を見て、送り先を判断するのと似ている。郵便局は、一番末端 のもの(ポストから集配したり家に配ったりする)ではなくて、中間的な集配を する郵便局がある。

同様に、ルータも、自分自信は、最終到達地点のコンピュータを知らなくても、 別のルータに送るだけのようなものもある。

ルータは、隣のルータや回線が故障した時には迂回路を探す。 迂回絽がなければ通信は途絶する。

IPアドレスの表記

IPアドレス を表現する時には、普通、8ビットずつ区切って、0から255までの10進 数を4つで表現される。たとえば、次のように書く。


12.34.56.78
これは、10進数でいくつになるかを計算したい時には、次のようにして計算 する。

(((12 * 256)+34)*256+56)*256+78

TCP層

TCP(Transmission Control Protocol,tcpip) は、IP の機能を利用して、信頼性のある(reliable)双方向の ストリーム転送サービス(stream transport service) を提供する通信プロトコルである。 ()。 ストリーム には、次のような性質がある。

TCPで通信をする時に、通信相手を識別するにはIPアドレスと ポート番号(port number) が使われる。ポート番号は、16ビットの整数で、よく使われる アプリケーション ( サービス ) には、あらかじめどの番号を使うかが決めらている。これを well-knownポート番号(well-known port number) という。

TCP/IPで2つのプロセスが通信をしている図

TCP/IPによりより提供されるストリーム

応用層

TCP層の上には、 応用層 が定義されている。この層では、電子メールの転送、ファイル転送、遠隔ログ イン、WWW、といった TCP/IP を利用するプログラムの間の通信方法が定義さ れている。

TCP/IPを使った通信は、まるでコンピュータ同士(プログラム同士)が電話で 会話するように進められる。

表? TCP/IPの上に定義されているプロトコルの例

--------------------------------------------------------------------
ポート番号 プロトコルの名前			目的
--------------------------------------------------------------------
21	FTP(File Transfer Protocol)		ファイル転送
23	Telnet					遠隔ログイン(telnet)
25	SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)	電子メールの転送
79	finger					fingerコマンド
80	HTTP(HyperText Transfer Protocol)	WWWのデータ転送
119	NNTP(Network News Transfer Protocol)	ネットワーク・ニュース
						の記事の転送
513	login					遠隔ログイン(rlogin)
--------------------------------------------------------------------

物理層

IPのデータグラムを転送するためには、さまざまな物理的な媒体 (電線、光ケーブル、電波) が使わる。 LANでは、イーサネットがよく使われる。 10 M bps, 100 M bps, 1000 G bps の種類がある。 物理媒体は、同軸ケーブル、より対線(Twisted Pair Cable)、 光ファイバが使われる。
モデムなどを使った通信では、 PPP(Point to Point Protocol)とい うプロトコルの上に、IPデータグラムが流されてる。

ホストとルータ

ホスト
ネットワークに接続されているコンピュータの中で、ネットワークに1ヵ所の 出入り口( ネットワーク・インタフェース(network interface) )を持っているもの
ルータ
2ヵ所以上の出入り口を持っているコンピュータ
ルータは、ネットワークとネットワークを接続するた めのコンピュータである。 ルータは、入ってきたIPのデータグラムのIPアドレスを見 て、どのネットワークに送ればよいかを判断する。 ルータは、 ゲートウェー(gateway) と呼ばれることもある。
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Last updated: 2001/05/31 00:47:21
Yasushi Shinjo / <yas@is.tsukuba.ac.jp>